食・栄養

最新科学に基づいた栄養バランスとは

日々の生活の中で必要不可欠な行為である食事ですが、適切な栄養バランスで摂取しないと、生活習慣病や不調などの原因に直結してしまいます。それでは、適切な栄養バランスとはどのようなものを指すのでしょうか。最新科学に基づいて解説していきます。

現在、最新科学に基づいた栄養バランスにおいて摂取することを推奨されている栄養は以下の7つです。

1. マクロ栄養素

マクロ栄養素とは、エネルギーの大部分を占めるタンパク質・脂質・炭水化物の3種類の栄養素のことです。食事を摂るときに目安になる割合は、タンパク質20~30%、炭水化物50~55%、脂質20~25%となります。3種の摂取バランスのことをPFCバランスと言います。PFCとは、Protein=プロテイン(タンパク質)、Fat=脂質、Carbohydrate=カーボ(炭水化物)のことです。マクロ栄養素を自分の身長や体重、活動量などに合わせて必要量を割り出すマクロ管理法という食事管理方法があります。適正量が分かれば過不足が分かりやすく食事を管理するのに役立ちます。また、体脂肪を減らしたい人には、一般的に40:40:20の比率が推奨されます。

2. ミクロ栄養素

ミクロ栄養素とは、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、植物化学物質など、体が少しの量だけ必要とする栄養素の種類です。ミクロ栄養素は、微量栄養素とも呼ばれ、栄養素の中のビタミン・ミネラルのことを指します。マクロ栄養素を助ける役割を担っています。ミクロ栄養素には、鉄・ビタミンA・ヨウ素・モリブデン・銅などがあります。

3. 食物繊維

食物繊維とは、人の消化酵素では消化できない食品成分です。小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、整腸作用や血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下などの生理機能があります。食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。水溶性食物繊維には、血糖値の上昇を穏やかにする・腸内の善玉菌を活性化させる等の効果が期待できます。不溶性食物繊維には、便を増やす・糖や脂肪を排出を促す・水分を吸収して膨らむ性質があり、便のカサを増すことで腸を刺激し、便通を促す・有害物質を吸着して排出するなどの効果が期待できます。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂取することが健康のために大切です。理想的なバランスは、不溶性と水溶性を2:1割合摂取するとよいと言われています。

4. 抗酸化物質

人は体内の活性酸素が増えると、見た目や臓器の老化から生活習慣病に罹るおそれがあります。その活性酸素を減らし、生成を緩やかにする効果を抗酸化と言います。抗酸化効果のある食べ物を抗酸化物質と呼びます。活性酸素を減らすことにより、生活習慣予防、老化防止の効果が期待できます。

5. プレバイオティクスとプロバイオティクス

プロバイオティクス

 プロバイオティクスとは、有害な病原細菌を抑制する「抗生物質(antibiotics)」に対して提唱された概念で、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」と定義されました。腸内環境を良くし、私たちの健康に役立つ微生物がプロバイオティクスです。プロバイオティクス食品として、ヨーグルト・乳酸菌飲料(乳酸菌やビフィズス菌)・チーズ・納豆・ぬか漬け・味噌・甘酒・キムチなどがあげられ、青汁やサプリメントなどからも手軽にとることができます。

プロバイオティクスには次のような条件が求められます。

①安全であること
②ヒトの腸内フローラを構成する細菌であること
③胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達すること
④腸内で増殖できること
⑤ヒトに対して明らかに有用であること
⑥食品などの形で有効な菌数を維持できること
⑦取り扱いやすく安価であること
引用「公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会ホームページ」

 プロバイオティクスの効果として、便秘や下痢、乳糖不耐症の改善効果、免疫機能の改善による感染防御やアレルギーの抑制効果などが報告されています。また、ビフィズス菌が産生する酢酸は非常に強い殺菌作用があり、腸の粘膜を保護する作用があるのでO-157などの予防にもいいと言われています。
食べ物からとった善玉菌は、腸内にとどまり自ら増殖したり生き続けるものではないので、腸内健康への効果を期待するには持続的に摂取する必要があります。

プレバイオティクス

プレバイオティクスとは、「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されている概念と腸内にいる善玉菌にエサを与え、増殖を促す食品のことを指します。オリゴ糖や食物繊維などが有名です。

プレバイオティクスには次のような条件が求められます。

①消化管上部で分解、吸収されないこと
②大腸に共生するビフィズス菌などの有益な細菌の栄養源となり、それらの細菌の増殖を促進すること
③腸内フローラを健康的な構成に改善できること
④ヒトの健康に対し有益に作用すること
引用「公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会ホームページ」

プロバイオティクスの増殖促進、整腸作用、ミネラル吸収促進などの働きがあります。腸内健康においてとても有用な栄養素です。

更に、最近注目されているプレバイオティクスとプロバイオティクスの効果の両方を持つシンバイオティクスというものが存在します。シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものです。シンバイオティクスは、ビフィズス菌や乳酸菌などの生菌であるプロバイオティクスと、難消化性オリゴ糖や食物繊維などの有用菌の増殖を促進するプレバイオティクスを摂取することで、双方の機能を相乗的に発揮できると考えられています。
シンバイオティクスは、腸内環境を整える効果的な腸活として注目されています。良好な腸内環境のベースができるのは、腸活を始めてから3ヶ月が目安です。継続した習慣が大切です。

6. 炎症を抑制する食品

炎症を抑える食品とは、抗酸化物質や天然の抗炎症物質であるビタミンAやCが豊富に含まれているものを指します。また、魚やアボカドに含まれるヘルシーな脂肪には、全身の血流を整えるオメガ3脂肪酸が含まれています。炎症は、体を守るために免疫機能が働くことで起きる防御反応であり、治癒や修復過程の最初の段階で、体が細菌や病原体、毒素を撃退し、損傷組織の修復を助けます。しかし、痛みや隠れ肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常、肝疾患、認知症、がん等を引き起こす原因にもなるため適切な炎症バランスを保つ必要があります。

新型栄養失調を知っていますか?

新型栄養失調とは、食事によるカロリーは足りているのに、必要な栄養素が不足している状態のことです。疲れやすい・風邪をひきやすい・肩が凝るなどの体調不良を引き起こしてしまう原因にもなります。



原因とは?

極端なダイエット

過度なダイエットが栄養不足を引き起こします。ひとつの食べ物ばかり食べる○○ダイエットなども大きな原因になります。

偏った食生活

インスタント食品やコンビニ弁当、外食頼りになり、食事が偏ってしまっている場合も注意が必要です。

たんぱく質不足

野菜中心の食事でたんぱく質が不足してしまうと、筋力が低下してしまいます。ポッコリお腹で、他はガリガリのような体形になってしまいます。

栄養素不均衡

糖質や脂質の過剰摂取に対し、ビタミンやミネラルが不足している状態が続くと危険です。おにぎりしか食べないやパンしか食べないといった食習慣が続くと栄養不足になってしまいます。

新型栄養失調になってしまうと、免疫機能低下、めまい、息切れ、口内炎、気分の落ち込みやイライラが増加、食べ物の味が分かりにくく、好き嫌いが増える、肉や油ものを避け、同じ食事の繰り返しといった問題が起きます。

朝食を摂り、同じものを避け、多様な食材を取り入れることやサプリメントの過度な依存を避け、食事から幅広い栄養素を摂取すること、カロリーだけでなく、栄養素も摂ること、ダイエット方法や食事制限を注意深く選び、バランスを考慮すること、魚、卵、大豆製品、肉類などからタンパク質をしっかり摂ること、ナッツ、豆類、魚などからマグネシウムを摂取すること、善玉菌を増やすために食物繊維を多く含む食品を摂取し、腸内環境を改善することを心がけましょう。

農林水産省が掲げる「食生活指針」

「食生活指針」は、一人ひとりの健康増進、生活の質の向上、食料の安定供給の確保などを図ることを目的として、2000年に文部省、厚生省、農林水産省が策定しました。毎日の生活の中で実践できるものから取り組んでみましょう。

食生活指針10項目

1 食事を楽しみましょう。
2 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
3 適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。
4 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
5 ごはんなどの穀類をしっかりと。
6 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
7 食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。
8 日本の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。
9 食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。
10 「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。
食生活指針の具体的な取り組み内容は、農林水産省ホームページ「みんなの食育『食生活指針』」をご覧ください。

引用農林水産省「みんなの食育『食生活指針』」

食生活を見直そう

最新科学に基づいた栄養バランスと栄養バランスの大切さについて知っていただけたと思います。必要なカロリーを必要な栄養と一緒に摂取できるように心がけましょう。食事だけでは難しいという方はぜひサプリメントを試してみてください。サプリメントに頼りきりになってしまうのは良くありませんが、あくまでサポートという形であれば素晴らしい身体の助けになってくれます。自分にできることから食習慣の改善を始めてみましょう。

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